「さくらのレンタルサーバー」のホームページをIPv6で公開してみた

2016年7月27日


このホームページは、「さくらインターネット」社が提供する「さくらのレンタルサーバ ライト」を利用して公開しているが、レンタルサーバーがIPv6に対応したので、IPv6のインターネットに対してもホームページを公開してみた。

ホームページをIPv6に対応させる動機

このホームページは、さくらインターネット社の「さくらのレンタルサーバ ライトプラン」 http://www.sakura.ne.jp/lite.html を利用して、公開している。

ホームページを公開するサーバは、私の自宅にあるのではなく、さくらインターネット社が持っている。1台のサーバを多数のユーザで共有する形のサービスだが、料金が月々129円くらいに抑えられているので、自前でサーバーを持つ場合と比べ、多くの場合はコスト的に有利だ。

sugi.sakura.ne.jp のホスト名は、(この文章を書いた時点では)IPv4のアドレスとして 202.181.97.84 と対応付けられている。ブラウザのアドレス欄に http://sugi.sakura.ne.jp/ と入れれば、ブラウザはDNSサーバにアクセスしてIPv4のアドレスを得て、 202.181.97.84 と通信して、ホームページのデータを取り寄せることができる。

sugi.sakura.ne.jpが、IPv4のアドレスにしか対応付けられていないと、IPv6のみ利用可能なインターネット環境からは、sugi.sakura.ne.jp にアクセスできない。

IPv6オンリーの環境でパソコンを使っている人は、少ないと思うが、自宅のネット環境がIPv6に対応したので、意図的にIPv6のみ使える環境を作って、このホームページに接続したところ、(サーバの設定をIPv6対応に切替える前の段階では、)やはりつながらなかった。

WebサーバがIPv6を使わない設定だと、IPv6オンリーの接続環境からは、接続できない

この結果からは、IPv6のインターネットからも、ホームページにアクセスできるようにすれば、もっと多くの人にページを見てもらえるのではないか、と考えたくなる。

「さくらのレンタルサーバー」では、設定に応じてIPv6のインターネットにもホームページを公開できるようになっている。IPv4のインターネットへの公開は、最初から有効になっているので、IPv6の設定を行うと、IPv4とIPv6の両方からアクセスできるホームページになる。

IPv6とIPv4の両方に対応したホームページは、IPv6とIPv4の両方に接続されたパソコンからは、IPv6を優先してアクセスしてもらえるケースが多い。

このような設定は、Googleや首相官邸など、先進的なホームページで採用されている。先進性を楽しみたいのであれば、自分のホームページも、IPv6とIPv4の両方でアクセスできるようにしたいものだ。

ちなみに、sugi.sakura.ne.jp は、 www274.sakura.ne.jp と同じアドレスを指している。このサーバは、多数のユーザで共用しているので、www274のサーバに個人専用のホスト名が、 sugi.sakura.ne.jp を含め、多数関連付けられていることになる。

「さくらのレンタルサーバ ライト」のIPv6設定方法

「さくらのレンタルサーバ ライト」は、ユーザの側で設定を変えれば、IPv6のインターネットからアクセスできるようになる。

サポートのページ(公式) に書いてある方法でサーバの設定を更新すると、ホスト名を、IPv6のアドレスにも対応付けて、DNSで検索できるようになる。

この状態で、Linuxのhostコマンドで sugi.sakura.ne.jp を検索すると、以下のようにIPv4とIPv6のアドレスが両方とも表示される。従って、IPv4だけでなく、IPv6のネットワークからも、ホームページを表示できることが分かる。

DNSでこのホームページのホスト名を調べると、IPv4とIPv6のアドレスが両方とも表示される

ちなみに、共用のサーバ www274.sakura.ne.jp 自体は、以前からIPv6に接続されていた。設定の変更により、sugi.sakura.ne.jpに対しても、DNSでIPv6アドレスを検索できるようにしたので、IPv6でアクセスしてもらえるようになったのだ。

IPv6からアクセスできるようにするメリット

ホームページをIPv6からも見られるようにする最大のメリットは、IPv6しか使えない接続環境からアクセスできることだ。ただし、それだけではない。

IPv6とIPv4を両方使える接続環境で、IPv6経由で接続してもらうことで、混雑しがちなIPv4のネットワークを迂回できるというメリットもある。

プロバイダーによっては、IPv4はPPPoE接続で重いが、IPv6はネイティブ接続(IPoE)で速いところもある。IPv4とIPv6を両方使えるパソコンからは、IPv6を優先してアクセスされることが多いので、ホームページを速く表示できるかもしれない。

IPv6からアクセスできるようにするデメリット

日本から見る場合は、IPv6に対応させることで、ホームページの表示がかえって遅くなる可能性もある。

NTT東西が提供する「NGN」を使っている「フレッツ光next」や「ドコモ光」などのユーザに対しては、IPv6によるインターネット接続が提供されていない場合もある。IPv4でしかインターネットにつながらないユーザにも、NTT東西から、インターネットにはつながらないIPv6アドレスが提供される場合がある。このIPv6のアドレスは、NTT東西が作ったネットワーク内でしか使えないにも関わらず、グローバルIPアドレスになっている。

パソコンは、自身に設定されたIPv6のアドレスを見て、IPv6でインターネットにつながったと勘違いして、IPv6でホームページのデータを取得しようと試みる。

しかし、接続の要求はNTT東西のネットワーク「NGN」から出られず、Webサーバにとどかないため、応答がない。

応答が一定時間ないと、WebブラウザはIPv6によるアクセスをあきらめ、IPv4を使って改めてホームページにアクセスする。こちらは成功するので、ようやくホームページが表示されることになる。

このように、ホームページにアクセスするたびに、タイムアウトまで待たされてしまうことになるので、表示がとても遅くなるそうだ。

この問題は、インターネットそのものの問題というよりも、日本の国家がこのような無理のあるネットワーク構成を、NTT東西に強いしたことで起きているそうだ。

なお、このような状況のユーザは、googleや首相官邸にアクセスするときも、ノロノロになってしまうので、何らかの対策をして、IPv6でホームページを読みに行かないようにしていることが多い。

従って、このデメリットがあるからといって、自分のホームページをIPv6で公開することを、あきらめる必要はないと思う。

IPv6でホームページにアクセスする

IPv6でホームページにアクセスする方法は、IPv6のインターネットに接続された端末で、ブラウザに普段通りのURLを入力するだけだ。

このようなリンク http://sugi.sakura.ne.jp/ にアクセスするだけで、IPv6でつながっているのであれば、IPv6でホームページが取得される可能性が高い。(ただし、パソコンやブラウザの設定が、IPv6を使うようになっている場合に限る。IPv4しか使えない環境では、最初からIPv4でホームページにアクセスする)

私のホームページは、アクセスがIPv4かIPv6かを区別して表示できるようにはなっていないので、ブラウザでホームページを表示するだけでは、本当にIPv6でアクセスしたかは分からない。

netstatでIPv6で接続したことを確かめる

Linuxであれば、netstatコマンドで、自分が作ったインターネットへの接続を1つ1つ表示して確認できる。

例えば、http://sugi.sakura.ne.jp/を表示した直後に、netstatコマンドを実行すると、以下のように tcp6 (IPv6によるTCP接続)で、www274.sakura.ne.jpに接続していたことが分かる。

netstatコマンドでipv6によるtcp接続を確認

Webサーバのログを読んで確認する

ホームページを管理する立場としては、自分のホームページが、インターネットからIPv6とIPv4のどちらでアクセスされているか、知りたい気持ちがある。

Webサーバのログを読めば、IPv6とIPv4のどちらからアクセスされたかが分かる。

アドレスが「:」マークで区切られているのが、IPv6のアドレスだ。IPv6のアドレスは、アドレスをホスト名に変換しづらいので、ホスト名ではなくIPアドレスのまま残ることが多いので、このようなアドレスが残っていれば、IPv6のインターネットからアクセスされたと考えられる。

ちなみに、上記のログは、手元で使っているパソコンにWebサーバを入れて作ったもので、本当のホームページのログではない。Zenfone GoでChromeブラウザを動かし、手持ちのPCにアクセスしたときのログの一部を示している。

IPv6からアクセスされた場合に残るWebサーバ(Apache 2)のログの例

ちなみに、このホームページを収めている「さくらインターネット」社のサーバは、Free BSDの上でApacheを動かしている。LinuxではなくFree BSDを使っているのは、この道のプロならではの、こだわりなのだろうか・・・。


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