更新: 2005月12月5日
作成: 2004年11月14日
人が集まる交差点では、歩行者用の信号機から、メロディーが流れる所もあります。
目が不自由な人に、信号の様子を知らせるためのもので、音響信号機と呼ばれています。むかしは「盲人用信号機」と呼ばれていたそうです。
警察庁の調べによると、平成17年3月末現在で、音響信号機は日本全国に約13,400基あるそうです。(このうちメロディ式が約1,700基、鳥の鳴き声などの擬音式が約11,700基。)
私は、個人的な趣味で信号機のおもちゃを作っているのですが、せっかくなので、音響信号機の機能もつけることにしました。
音響信号機には主に、メロディーが流れるものと、鳥の鳴き声を模擬した音が流れるものがあります。それぞれを実際に作ってみましたので、お楽しみください。
スクランブル交差点などでは、歌の旋律を流しているところがあります。私が知っている限りでは、「とおりゃんせ」(日本のわらべうた)と「故郷の空」(スコットランド民謡)が有名だと思います。
どちらとも、著作権は消滅していますので、製作した信号機のメロディーをこのホームページに載せてみました。さっそく、聞いてみましょう。
どこかで聞いたことがありませんか?できるだけ、本物の信号機の雰囲気が出るように作ったつもりですが、いかがでしょうか?
楽譜のほうは、こうなっています。
実際の音声は、楽譜の表記よりも1オクターブ高い音程にしてあります。高い音程を得意とするセラミックイヤホンから出力しているからです。
こちらの楽譜は、こんな感じです。
こちらでも、実際の音程は、楽譜の表記よりも1オクターブ高くしてあります。
ちなみに、楽譜の画像は「Finale Notepad 2003」というフリーソフトウエアを使って書きました。マウスをこちょこちょいじるだけで、簡単に楽譜が書けてしまう、とても便利なソフトウエアです。
PIC12F675を使い、わずかな外付け部品で実現しています。音程をより正確にするために、セラミック発振子(4.19MHz)を使っています。
こちらが、回路図です。とても単純明快です。
電源は、歩行者用信号機の「青」の出力を、そのまま使います。つまり、歩行者用青信号の出力部分に、この回路を並列につなぐのです。
具体的には、信号機本体のVccをメロディー回路のVccにつなぎ、信号機本体の「LAWB」(道Aの歩道青)か「LBWB」(道Bの歩道青)をメロディー回路のGNDにつなぎます。(つなぐ相手の制御基板本体は、もう1つ先のページで詳しく紹介しています。)
音は、セラミックスピーカー、あるいは、セラミックイヤホンから出します。セラミックのスピーカーやイヤホンは、インピーダンスが高いので、電力増幅回路を別途設けなくても、十分な音量が得られます。
出力の両方の端子をマイコンのピンから出しているのは、一方のピンをHI、もう一方をLOWになるように出力を切り替えることで、フルブリッジ回路として使えるからです。イヤホンにかける電圧の向きを、両方に取れるので、出力のピーク・ピーク値を大きくできます。抵抗器で出力を抑えているので、必ずしも高い電圧を出す必要はないのですが、こうすることで、なんとなくすっきりした音が出るような気がします。
プログラムでは、楽譜を記録したデータを、順次読み出して演奏していきます。
ソースコードは、曲ごとにそれぞれ、こちらとなります。
とおりゃんせ 041114a14.asm
故郷の空 041114a15.asm
プログラムには、著作権があります。個人的な趣味にお使いください。それ以外の用途をお考えの場合は、事前にご相談ください。なお、収録されている音楽には、権利はありません。
ちなみに、プログラム中のデータを書き換えれば、いろいろな曲を鳴らせます。個人として楽しむなどの目的をこえて使うときは、音楽の著作権の処理が必要な場合があります。「とおりゃんせ」や「故郷の空」などの、権利切れの作品であれば、こころおきなく使えます。
ちなみに2、最初の0.3秒程度は、鳴らさないようにするのがポイントです。青信号が点滅しているときは、そろそろ赤が近いので、音を止めたほうが無難です。点滅中は、メロディー装置の電源が頻繁に入ったり切れたりしますが、起動後0.3秒間は無音とすれば、点滅中は、鳴り始める前に電源が切れるので、ずっと静かにできます。(この信号機の制御基板では、青信号の点滅は、点灯0.25秒と消灯0.25秒を、交互に繰り返すようになっています。)
十字路などでは、どちらの横断歩道が青になっているかを区別できるように、道の方向ごとに、別の音を鳴らしている所があります。
そんな場所でよく使われるのが、鳥の鳴き声みたいな音「カッコー」と「ピヨ」です。
この「カッコー」と「ピヨ」の音は、横断歩道の両端にある歩行者用の信号機につけられたスピーカーから出ています。最近では、横断歩道の手前側と向こう側の信号機が交互に鳴る「同種鳴き交わし」方式の信号機も増えています。(最近では、手前と向こうで違う鳴き声とする「異種鳴き交わし」方式が開発され、好評らしいですが、今回の作品は同種鳴き交わし方式のプログラムです。)
鳴き交わし方式だと、横断歩道の両方の端がどこにあるかが、音が聞こえてくる方向から分かります。横断歩道からそれたり、渡る横断歩道を間違えたりする可能性を、より低くできると考えられています。
自作信号機「ひかり201号」でも、「同種鳴き交わし」方式を使えるようにしました。さきほどの回路とは別にもう1種類、音声用の回路を製作しました。こちらでは、スピーカーを2つつなげられるようになっています。音声を、それぞれのスピーカーに、交互に出力します。
鳥の鳴き声は、実際の信号機を録音した音声を聞きつつ、似たような雰囲気になるように努めました。
鳥の鳴き声には著作権がないため、こちらもホームページに載せることができます。
では、作った音声を聞いてみましょう。
どうです。本物っぽく聞こえるでしょう。なお、掲載した音声ファイルは、2台置くスピーカーのうちの、1台ぶんの音声だけを取り出したものです。実際には、もう1台スピーカーがありますので、両方のスピーカーを合わせると、音が鳴る頻度は、この音声ファイルの2倍になります。
回路は、PIC12F675を使った簡単なもので、こちらも、セラミックスピーカーか、セラミックイヤホンから音が出ます。スピーカー2台ぶんの出力を付けた関係で、セラミック発振子は省略されています。クロック周波数は、マイコンが内蔵するRC発振子により決まり、およそ4MHzとなりますが、品質のばらつきによる個体差があるようです。
回路図は、次のように、たいへんシンプルです。
2つのイヤホンそれぞれで、マイコンのピンでフルブリッジ回路を作り、出力をしています。このため、ステレオイヤホンのような、両方のチャンネルに共通なGNDピンはありません。3ピンのステレオイヤホン端子は使えません。モノラルの端子が、2つ必要です。
音声回路の電源は、歩行者用青信号から取ります。互いのVccをつなぎ、音声装置のGNDを、信号機制御基板の歩行者用青点滅の出力部分につないで使います。
鳴き声を模擬するソフトウエアでは、ひたすらプログラムを書いて音を出し、実物と近くなるように調整を繰り返しました。
どちらとも、先にGP0,GP1がつながったイヤホン(PHN)を鳴らし、次にもう一方のイヤホン(PHN2)を鳴らします。その後は、電源が入っている限り、交互に鳴り続けます。
ソースコードはこちらです。
カッコー 041114a17.asm
プログラムには、著作権があります。個人的な趣味にお使いください。それ以外の使い方を希望される場合は、事前にお問い合わせください。なお、鳥の鳴き声そのものに、著作権はありません。
こちらも、最初の300ms程度は、鳴らさずに待っています。そうしないと、青信号が点滅しているときに、やかましく、不自然な音を出してしまうからです。
音響信号機の機能をつけたことで、部屋の中が交差点になったような気分です。みなさまもぜひ、お試しください(笑)。
屋外での使用は、本物の信号機と勘違いする危険性がありますので、絶対にやめましょう。交通安全の実習などであれば、使ってもよさそうですけれど。
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