2018年5月3日
アーケードゲームやテレビアニメとして展開されている「アイカツフレンズ!」で、3DCGによる同じ振り付けのダンス映像が、3種類のカメラワークで公開されている。見せ方が変われば印象が変わる好事例となっている。
ゲームセンターなどに置かれている「アイカツ!」シリーズのゲームマシンは、3DCGで描かれたダンス映像を背景に遊ぶ、アーケードゲームだ。衣装が印刷されたカードを集めて、リズムゲームにチャレンジするらしい。筆者は男、かつ大人なので、遊んだことがないけれども(恥ずかしくて近寄れない・・・)、世間では有名なゲームらしい。
今でも続いており、最新版の「アイカツフレンズ!」が2018年度から始まったばかりだ。かれこれ、シリーズ開始から5周年になるらしい。
「アイカツ!」シリーズの3DCGによるダンス映像は、Youtubeで公式配信されていたり、テレビアニメとして毎週1本ずつくらい放送されている。全国放送されているだけあり、レベルはめっぽう高い。毎週のように作られる生産性と、クオリティーの高さを両立させた作品として、かなり名高いものがあると思う。
最近、楽曲「アイカツフレンズ!」(作詞:松原さらり、作曲:藤末樹、編曲:Mitsu.J(Digz, Inc. Group)で、同じ振付で、カメラワークが違う3通りの映像が、Youtubeで公開されたので、じっくり見ることにした。
Youtubeで、「データカードダス アイカツ!」シリーズの公式が、『アイカツフレンズ!』おどってみて♪の配信を始めた。
この映像は、ゲームマシンのリズムゲームをベースにしているようだが、カメラが固定されている点が特徴だ。
振付がよく見える。動画を見た人が実際に踊ることを期待した動画なのだから、そりゃ、そうだ。
2人で並んで踊るのが基本だが、ときどき円弧を描いて回りながらダンスしたり、少し前に出てタッチしあったりと、変化もあることが、客観的によく分かる。
振り付けでは、歌詞の内容を全身で表現している部分が、目立つ。例えば・・・
場面 | 振付の内容 |
---|---|
笑って… | 笑顔で、開いた両手を左右に振る |
怒って… | 両手を握りしめて、上下に振る |
楽しんで… | 右手をぐるぐる回しながら走る |
泣いて… | 両手を、手の甲を上にして、目の下に置き、少しうつむく |
などなど。
終盤で、手を取り合って、出会えたことを喜び合う場面が、クライマックスだ。
(劇中で)実際にライブを見に来た人たちが見るのは、こういう姿なのだろう。振付の面白さは、見ている側が自分で探していく必要がある。誰かがカメラワークで、分かりやすく演出してくれることはない。
ちなみに、キャラクターの影が、あいまいな楕円っぽい形になっている。振付で体を動かしても、影の形は変わらない。ゲームマシンで高速に表示するために、画質に対して、ある程度妥協していることが伺える。
ときおり、スカートの下にはいているスパッツが見えてしまう場面がある。カメラが固定されているので、そのような場面を避けられないのだ。
「データカードダス アイカツ!」シリーズの公式は、ゲーム画面で使われているものと類似したダンス映像を、数多くYoutubeに公開している。アイカツフレンズ!ミュージックビデオ『アイカツフレンズ!』をお届け♪が、最初の映像と同じ楽曲だ。この映像は、ソースが縦長になっている都合上、画面左右に枠がついた、変則的な形をしている。ゲーム機が、液晶パネルを縦長配置にしている都合上、公式なプレイ画面は、縦長の映像となっているのだ。
スマホなど、縦長の画面の機器で、縦長の映像をそのまま見られるバージョンの動画も、【スマートフォン用】アイカツフレンズ!ミュージックビデオ『アイカツフレンズ!』をお届け♪として公開されている。
映像には、花吹雪のようなものが舞っていたり、キャラクターが触れ合うと光を放ったりするような、CGの効果が入っている。
また、これらは、カメラが動く映像だ。カメラが動くと、印象が大きく変わる。
カメラを立体的に動かすと、場の広がりがよく見える。
見せたい動きは、アップで映している。腰や手を振ったりして、何かを表現しているときは、内容がよく分かる。
ふたりでポーズを決めているときは、二人揃って見栄えがする見せ方をしている。例えば…
場面 | 表現の内容 |
---|---|
アイドル活動… | 2人で腕を使い、ハートマークを作る様子を、正面に回り込んで映す。 |
きっと大丈夫… | 前後に2人で並び、リズムに合わせ左右に体を出し、指で互いのほおを突く様子を、まっすぐ映す。 |
スペシャルなマッチング… | 2人で腕を組んで並ぶ様子を、まっすぐ映す。 |
クライマックスとなる「出会えて、よかった」の部分では、差し出された手を一人称で見るような、主観を感じさせる視点になっている。「よかった」うれしさが伝わってくるような、ジーンと来るシーンだ。
このように、振付の見せ場を、カメラワークが教えてくれるので、一生懸命見なくても、何が面白いかが、自然と伝わってくる。
ちなみに、カメラが動くバージョンでは、スパッツは、めったに見えない。いやらしい感じにしないことも、カメラワークの最重要課題なのだろう。
ちなみに2、この映像のベースとなっているアーケードゲームでは、この映像の上にリズムマークが重ねて表示されて、タッチのタイミングなどを競うらしい。リズムマークに夢中になると、背景の映像が頭に入らないような気がするのは、わたしが大人だからだろうか…。表現されているのは、ゲームの世界で、魅力的にがんばっているプレイヤーキャラクターたちの姿だと思う。
アニメの1話が、バンダイチャンネルで公式配信されている。ダンスシーンは、アイカツフレンズ! 第1話 ハロー フレンズ! (18分20秒から)を見れば、再生できる。
アニメの映像は、ゲーム用の映像と比べ、大幅にクオリティが上がっている。
キャラクターの肌が、つややかだったり、衣装の質感が上がっていたり、美しいCG効果や効果音が加えられていたり…と、いたれりつくせりで、見ていて楽しい映像に仕上がっている。
ドラマの都合で、着ている衣装がこれまでの映像とは違う。
それだけでなく、カメラの動きが、ゲーム用の映像と、少し違っている。
どちらかというと、歌っている本人たちだけでなく、観客の様子なども、客観的に伝える構成になっている。「つまづいて落ち込んで…」あたりでは、客席の上段あたりからの視点や、歌手の裏側から観客の様子を見せる視点で映している場面があり、ダンスを見る側が見ている景色と、ダンスをしている側が見ている景色が対比されているようで、印象的だ。
アーケードゲームで遊んでいるプレーヤーキャラクターとして描くのではなく、会場全体の雰囲気を伝えてこそ、アニメ第1話のドラマなのだろう。
歌番組っぽい印象も、受けた。ステージの様子を余すことなく伝えることが、歌番組の視聴者が望むことだろうから。
ステージを取り囲む観客たちが、影だけでなく、きちんと人としてレンダリングされており、それぞれが応援する姿が描かれているところが、作りこみを感じさせる。
床に見える影が、キャラクターの形と合っている、というような形で、高級なコンピュータでじっくりレンダリングしたことを思わせる表現も見える。
スカートの内側のスパッツは、決して見えない。テレビで夕方に放送するからには、鉄壁のガードをしているのだろう。
リアルな歌番組でも、テレビで見る歌手の姿は、たいていこんな感じだ。カメラの回し方という演出を加えた表現なので、ライブに実際にでかけて見える様子とは、相当違った印象を受けることになる。
ちなみに、現実の歌番組では、放送されたとおりのカメラワークは使えないように思う。画面が切り替わったときに、カメラやカメラマンが映ってしまいそうだから。CGだからこそ、好き勝手にカメラを回す特権がある。
その分、奇抜な映像にすることは容易なのだろうけど、あまり奇抜だと、よく分からない映像になってしまいそうだ。分かりやすさも考慮した、バランスのよい構成、というのが、5年くらいの中で少しずつ見えてきている気がする。
たまには、はめを外してみるのも、楽しいかもしれないけど。
同じ音楽、同じ振り付けでも、カメラの回し方は複数ある。「振付を客観的に見せたい」「ゲームのプレーヤーが活躍している様子を魅力的に見せたい」「ライブ会場の様子をドラマとして見せたい」のように、何を見せたいかに応じて、カメラの置き方が変わっている印象だ。
テレビ放送用の映像のほうが、リアルタイムでレンダリングする必要があるゲーム用の映像よりも、豪勢な内容になっている。
ゲーム用の映像では、スカートの内側がわずかに映ることもあるようだが、テレビの映像では、いやらしい表現は厳密に排除されている。
このようなカメラの回し方は、CGのダンス映像だけでなく、普段見ているドラマとかでも同じなのだろうと思う。あまり、意識しないけれど。
観光地で適当に写真を撮影するときとかでも、何を見せたいのか少し考えると、カメラの向け方が変わってくるような気がした。
ともあれ、奥が深い世界なのだろうな、ということだけは分かった。ゲームセンターで100円玉を稼ぐためには、とことん努力する必要があるのだろう。
トップページ → なにげなく自由研究(もくじ) → カメラワークって、すごい!--「アイカツフレンズ!」の3DCGを鑑賞
著者のメールアドレスは、トップページからご覧ください。
製作・著作:杉原 俊雄(すぎはら としお)
(c)2018 Sugihara Toshio. All rights reserved.