Opusフォーマットで音楽を聴く--音質と圧縮速度を両立

2016年8月11日


新しい音声の圧縮フォーマット「Opus」は、同じビットレートなら、MP3よりもかなり高音質だ。音声ファイルをパソコンで圧縮して、PCやスマホで再生して遊んでみた。

最近出てきたOpusフォーマット

Opusは、2012年に登場した、新しいオーディオの圧縮フォーマットだ。

音声データの一部を省略することで、低いビットレートでも、良好な音質を楽しめる。

音楽の圧縮では、MP3やogg vorbisよりも高音質らしい。また、極端にビットレートを下げると、電話で使われるような圧縮技術を併用して、聞き取りやすい音声になる特長もある。

IETF(Internet Engineering Task Force)がとりまとめた規格なので、特許を持つ企業が、特許を無償解放するなど、企業の協力を得ている。ただし、別の特許を主張する組織もあるらしく、余談を許さない面はある。

手持ちのLinux PC (Ubuntu 16.04が入っている)では、ターミナルから以下のコマンドを実行するだけで、圧縮に必要なツールをインストールできる。

sudo apt-get install opus-tools

インストールが終われば、非圧縮のwavファイル(例:in.wav)を用意して、コンソールで以下のように入力すれば、圧縮処理を実行し(ビットレートは128kbps)、圧縮後のファイル(例:out.opus)が得られる。

opusenc --bitrate 128 in.wav out.opus

圧縮が速い

たくさんの音声データを圧縮すると、それなりに時間がかかるので、圧縮処理が軽いことは、オーディオフォーマットにとって、けっこう重要だ。

opusは、圧縮が速い。44.1kHz 2チャンネルで録音された音声を、平均128kbpsに圧縮する場合、手持ちの6年前のパソコン(Core i3-350M搭載)でも、35倍速で圧縮できた。

MP3を圧縮するLAMEなどと比べると、桁違いに速い。ogg vorbisのエンコーダであるoggencよりも、若干速い。

再生環境

Linux (Ubuntu 16.04)であれば、主要な音声プレーヤーソフトは、opusに対応している。

Rhythmboxとtotemで試したが、ふつうに再生できた。

Androidでは、標準のgoogle play musicでは再生できなかったが、VLCで再生できた。VLCは、様々な形式のファイルを再生できるので、入れておくとよいだろう。

Windowsでも、VLCがおすすめだ。なお、Chromeブラウザにopusファイルをドラッグアンドドロップすると、そのまま再生できたりするので、ソフトのインストールが面倒であれば、試してみてもよいだろう。

低めのビットレートでの音質がよい

opusは、ビットレートが低めの領域で、MP3やogg vorbisよりも音質がよい。

パソコン内蔵の安っぽいスピーカーなら、64kbpsでも十分だ。

ヘッドホンできちんと聴きたいのであれば、96kbps以上にしたほうがよい。128kbpsのファイルを用意すれば、不満が生じることは、まずないだろう。

ただし、どんどんビットレートを下げていき、16kbps以下になると、携帯電話のような、会話の内容を聞き取れるだけの音声になってしまう。低いビットレートで音質が破綻せず、電話のような音質になるのが、opusの特徴らしい。

ちなみに、どんな圧縮フォーマットも、セミが大声であちこちで鳴いているような音声は苦手なようで、このような音声を圧縮すると、明らかにおかしな響き方になる。圧縮に向いた音声と、そうでない音声があることは知っておきたい。

あまり話題にならない理由

opusは、過去の音声圧縮フォーマットと比べ、音質も圧縮の速度も、かなり優れているが、世間ではあまり話題になっていない。

その背景には、メモリーカードや端末の内蔵メモリが大容量化したので、あまりファイルサイズにこだわらなくなってきたことがあると思う。

ファイルサイズの大きい、flacのような可逆圧縮がもてはやされる時代なので、音質悪化の原因となる不可逆圧縮そのものを排除して、高音質を楽しむのがポータブルオーディオでのブームのようである。

不可逆圧縮のフォーマットの中で、性能が優れていても、不可逆圧縮そのものが避けられてしまうので、opusのような性能を望むユーザが、ヘビーユーザの間では少なくなってしまったのだ。

通信に向いた低遅延な特性

opusの用途の本命は、通話アプリや電子会議アプリのような、通信だといわれている。IETFが標準化したのも、おそらくそのためだろう。

通信の世界では、今でも少ないデータ量で音声を送ることは重要で、効率よく圧縮できれば、通信料金を節約できる。

Opusは、同じ音質であれば、データ量をかなり減らせるので、有望なのだ。

音声の通信では、遅延を短くすることも欠かせない。

通信により、人が通話をするときは、相手に伝わるまでの遅れ時間(遅延)が長すぎると、会話がスムーズにできなくなってしまう。遅延を短くできて、はじめてスムーズに会話ができるのだ。

音声を圧縮する場合、圧縮フォーマットの都合により、ある程度の長さの音声が揃っていないと、圧縮を完了できない。

音声をその場で録音して、相手に送信する場合、録音した側では、圧縮が終わるまでは送信ができない。

従って、録音を始めてからかなり時間がたってから、相手に音声データが届くことになる。相手に音が聞こえるタイミングは、録音を行ったタイミングから大きく遅れるので、大きな遅延となってしまう。

Opusは、圧縮による遅延が小さい特長があり、リアルタイムの会話に使う場合に、適しているという。

まとめ


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