2016年2月8日
NTTドコモが手がける「dアニメストア」は、月額課金型のサービスで、契約すると、アニメのライブラリ作品(この文章を書いた時点で千数百作品、約3万本)が好きなだけ、ストリーミングかダウンロードで視聴できる。試しに加入してみたので、使い勝手を調べてみた。
私のケータイはガラケーだ。dアニメストアは、ガラケーでは視聴不能なので、キャリアの回線では視聴できないが、別途光やADSL等でブロードバンド回線を用意すれば、タブレットやパソコンなど他の手段で視聴できる。電話機で視聴できない場合でも、契約は可能だ。
私のところでは、docomoのガラケーを契約しているので、ケータイ料金と合わせて支払う形での契約が可能だった。
ちなみに、ケータイの契約がなくても、dアニメストアだけで契約することもできるらしい。
私が契約した時点では、最初の31日間は無料期間だった。無料期間を終えても、dアニメストアの視聴が生活の一部になっているようだったら、契約を続けてみようかなと思う。
まずは、Androidタブレット(Nexus 7 2012年モデル)で、視聴してみた。
タブレットやスマホでは、「dアニメストア」専用のアプリを使って、作品の選択や視聴を行う仕組みになっている。
専用のアプリは、ログインを伴うブラウザのような機能と、動画プレーヤーの機能を組み合わせた構成になっている。
会員数が200万にいっている割には、Android版のアプリのダウンロード数は10万から50万程度しかないようだ。うーむ。iOSのほうが主流なのか。あるいは、パソコンで見る人が多いのか…。
月額料金だけで見られる作品数は、この文章を書いた時点で、千数百作品、約3万本ある。何をどうやったら、そんな数の権利処理をこなせるのだろうか、という数だ。
アップル社の端末のパイプ役(通信路)だけで終わりたくないという、携帯電話会社の執念を感じさせる品揃えだ。
品揃えはおおむね、深夜に放送されるアニメファン向けのものが多い。
放送直後のものから、何年か前に放送されたものまで、とにかく「たくさん」ある。
深夜アニメの圧倒的な物量に埋もれてはいるが、日本アニメーションの「世界名作劇場」が26シリーズ揃っているなど、古い作品を中心に、子ども向けの番組もそれなりにある。
アニメなら、全てdアニメストアで見られるというわけではない点には、注意が必要だ。例えば、「ポケモン」はdアニメストアにはないが、「Hulu」や「dTV」にはあるようだ。作品の品揃えで、ライバル社といろいろ比べてみるのもよいだろう。
ちなみに、年少者の人気が高い「妖怪ウォッチ」は、最新話を含め全て配信している様子だ。
作品を探す方法は、複数提供されている。
あいうえお順の一覧で選んでも、検索機能で選んでもよい。ジャンルで調べることもできる。
何を見たらいいのか分からず面食らう人を想定してか、「ホーム」画面には推奨する作品を紹介する機能がある。「ランキング」や「今放送されている作品」等の無難な選定から、数年前を振り返る企画まで、作品の紹介は、あれこれと凝っている。
アプリの「ホーム」の画面には、前回最後に見ていた作品の、「続きから視聴する」機能もある。この機能は、パソコンで途中まで見て、続きをタブレットで見るような場合でも、一時停止した位置を認識するので、あっちこっちで作品を再生するような使い方をしている人には便利だろう。
作品を選ぶと、再生するためのリンクが複数表示される。たいてい、選択肢は6つか8つ出る。以下について選ぶためだ。
ストリーミングかダウンロードか(2択)
すぐに見たいならストリーミングするとよい。映像のデータが届き始めたら、速やかに再生が始まる。ただし、回線が遅いと再生が途切れることがある。また、一度再生したデータは端末の中に残らないので、再生のたびにネット経由で転送する必要がある。
ダウンロードは、端末に映像のファイル全体を1本まるごと保存する機能だ。ダウンロード中は再生ができないので、再生を始めるまで、とても長い時間がかかる。いったんダウンロードが終わってしまえば、好きなように再生できる。再生時は、映像が途切れる心配がなく、シークも早い。何度再生しても、ダウンロードが繰り返されることはない。ただし、ダウンロードしてから何日かすると、再生を始める際に、著作権処理のために通信が行われて、少し待たされることがある。
画質(ビットレート)(3択か4択)
他社のサービスでは、画質は自動選択になる場合が多いが、dアニメストアでは、3種類か4種類から選ぶことになっている。「ストリーミングの途中で画質が変化するなどけしからん」という発想でもあるのだろうか。ダウンロードでも、画質(とファイルサイズ)が異なる3~4種類から選択できる。
ストリーミングでは、回線の太さに合わない選択をしてしまうと、頻繁に画面が止まって、まともに再生できないことがあるので注意を要するが、再生中に手動で画質を切り換えることは可能だ。
これらの選択肢は、以下のように考えて選ぶとよいだろう。
画質の粗さが目立たないのは「すごくきれい」
「すごくきれい」にすれば、BDレコーダーでテレビ番組に高圧縮をかけた録画くらいの画質にはなる。
ふつうに番組の内容を楽しみたいのであれば、そこそこの画質と言えるだろう。
「きれい」「普通」と下げていくと、粗さが目につくようになる。
定額制でデータ量制限なしのブロードバンド回線ならなるべくよい画質で
キャリアの回線でストリーミングやダウンロードを繰り返し行うと、通信するデータ量が半端なく多くなり、ストアの月額料金をはるかに上回る負担になってしまう可能性が高い(あるいは、通信可能なデータ量を使い切ってしまう可能性が高い)。
定額制で通信データ量が制限されていない、家庭のブロードバンド回線や公衆Wifiがある場所なら、比較的速い速度で好きなだけ通信できるので、なるべくよい画質を選びたい。
ストリーミングでは再生が止まってしまうようなよい画質の設定でも、じっくり時間をかけてダウンロードすれば、楽しめる。
ストリーミングなら回線速度を考えて選ぶ
いつも最高画質で視聴できるとよいのだが、場合によっては画質を下げたほうが、気持ちよく楽しめることもある。
回線の太さによっては、最高画質でストリーミングすると、画面が頻繁に固まってしまうかもしれない。そんなときは、画質を下げれば、画面が固まりにくくなる。
キャリア回線で見るときは、画質を下げたほうが通信料金を低く抑えられる。
ダウンロードならストレージや時間を考えて選ぶ
自宅などでダウンロードする場合は、端末のストレージに余裕がないときは、画質を下げてダウンロードしたほうが、多くの作品を持ち歩ける。
ダウンロードする時間が少ししかない場合は、画質を下げたほうが、早くダウンロードが終わる。
Android端末で、10年ちょっと前の4:3の画角の作品を、ストリーミングで見てみた。
「すごくきれい」を選択したが、画質はVHSくらいだろうか。BDや放送の画質には遠く及ばないし、レンタルのDVDと比べても、やや劣る様子だ。画質よりも、膨大な数の作品を、見たいときにすぐに見られることに、価値があるサービスと言えるだろう。
とはいえ、小さなAndroid端末の画面では、高い画質でなくても、それほど違和感なく内容を楽しめる。至近距離で画面を見ることになるので、大きなテレビを離れてみる場合とは異なる体験ができる面もある。キャラクターの微妙な表情や視線、背景のすみに描かれたオブジェクトなどに、以前は気づかなかった発見ができるかもしれない。
再生は全画面表示にできるが、画面下のシステムバーは、表示されたままだ。
映像には常時、右下に「アニメストア」と書かれたウォーターマーク(白っぽい半透明のマーク)が入るが、それほどは目立たない。画面の右上に、テレビ局のロゴはない。
発色は、端末の性能に依存するが、テレビで見た場合と比べ、とくに違和感はない。
音声は2チャンネルのステレオだ。イヤホンをつければ良好な音質で楽しめるが、タブレット内蔵のモノラルスピーカーでは、チープな音しか出ない。
再生はスムーズだ。ジッタ(時間軸上のブレ)や、ティアリング(手前のコマと後ろのコマが、画面の上下などに分かれて混ざって表示されること)は、少し見た限りでは確認できない。
ごくまれに、再生が異常終了してしまうことがある。エラーメッセージが表示されたら、「ホーム」のページから続きを選んで再生すれば、作品の続きを見ることはできる。
ちなみに、一時停止したままにしておくと、端末のCPU負荷が高くなるという、困った性質があるので、あまり止めたままにはしないほうがよいだろう。
再生中のCPU負荷は、再生を始めて5分の時点で0.2程度で、それほど重くはない。
ちなみに、スクリーンショットはとれない(とっても真っ暗になる)様子だ。
作品にCMは入っていない。30分枠の番組は、24分くらいで終わることが多い。
画面をいったんタップすれば、再生コントロールが表示されるので、好きな場所までシークできる。ストリーミングだと、シークのたびにかなり待たされる。ダウンロードだと、ほとんど待たずにシークできる。頻繁にシークするなら、ダウンロードしておいたほうがよいだろう。
ストリーミングで頻繁に止まってしまう場合であっても、画質は自動では切り替わらない。再生がおかしい場合は、その場で画質を切り換えられるので、調整してみるとよいだろう。
縦画面でも横画面でも再生可能だが、横画面にしたほうが画面の面積を有効活用できる。
Androidアプリには「マイページ」の機能があり、これまでに見た作品を視聴履歴として確認できる。
また、前回再生した作品の、次の1話を表示する機能もあるので、続きを見たいならここに来てもよいだろう。
「マイページ」では、ライブラリを構成する作品数や全話数と、既に視聴した作品数・話数を表示する機能があり、なんとなく、コレクション欲をあおっている気がする。
新しめの映画などで、追加料金を要する作品もある。
追加料金は、月額料金よりも高めの設定が多く、やや手軽とは言いがたい品揃えだ。これだけの金額なら、レンタルショップへ行ったほうが、よい画質ものが見られるだろう。
無線LAN環境があれば、Android端末と組み合わせることで、Chromecastを使ってテレビで再生することも、可能だ。
Chromecastそのもののインストールが終わっていれば、使い方は意外と簡単で、Android端末のdアニメストアアプリで、キャストボタンを押し、Chromecastを指定すれば、以降はAndroidの側で再生の操作を行えば、映像がAndroid端末ではなく、テレビに表示されるようになる。
画質は、レンタルのDVDよりもいくぶん劣る程度で、作品の内容を楽しむには、それなりに見られる。
とくに、アナログ時代の古い作品は、もともと低い解像度で製作されていることもあり、違和感なく楽しめるものが多い。
手元のタブレットで見たい作品を選べば、目の前の大きなテレビで、好きなように再生できるというのは、今までにない体験だ。
Chromecastでは、常にストリーミング再生になる。Chromecastが直接ネットから映像データを取り寄せて再生するので、Android端末の側では、負荷はほとんどない。
帯域が十分あれば、再生はとてもスムーズで、発色や音質は良好だ。平日の昼間で、使っている人がそれほど多くないこともあってか、サーバー側の力不足を感じることは、ほとんどない。
回線の帯域が足りないと、容赦なくブツブツと映像が止まるので、手動で画質を下げる必要がある。
Chromecastに表示されるのは、再生中の映像だけで、「マイページ」などをテレビに映し出す機能はない。
Chromecastでの再生は、ゆったりと作品を楽しむには欠かせない。家にブロードバンド回線(Wifi)とテレビがあって、家族とのチャンネル権争いが熾烈でないのであれば、強くおすすめしたい。
なお、「Apple TV」でも、似たようなことができるらしい。
WindowsかMac OSのパソコンであれば、とりあえずパソコンの画面で再生することもできる。
dアニメストアのサイトにアクセスすると、マイクロソフト社の「シルバーライト」という拡張機能が入ったブラウザであれば、作品をパソコンの画面で再生できる。
作品の検索などは、スマホ/タブレットのアプリに近い方法でできる。
ただし、手持ちのノートPCでは、再生中にCPUを20%以上使ってしまうので、冷却ファンがうるさい。
映像は、ジッタがひどく、スクロールするとカクカクした動きが露骨になるので、あまり作品の内容を楽しむには向いていない。
画面に、手前のコマと後のコマが上下に分かれて映し出される「ティアリング」という現象も起こりやすく、見苦しい。
画面の色合いは、パソコンとテレビでは色のプロファイルが異なるので、妙に青みがかかった薄気味悪い発色となる。画面の色は、パソコンの側でユーティリティーを使えば細かく調整できるので、テレビに近づけることは可能だ。
画面の解像感は、タブレットで見た場合と近い感じだった。
音質は、ノートPC内蔵のスピーカーでは、タブレットのスピーカーと同様、安っぽい音にしかならない。イヤホンをつけると、いくぶんよい音がした。
パソコンでも再生は不可能ではないが、ファンのうるささや、再生がスムーズでないことなどを考慮すると、あまりおすすめできるものではなさそうだ。
パソコンの画面は、スマホやタブレットと比べれば大きいことが多いので、ちょっと大きな画面で見たい場合などは、役に立つかもしれない。
また、パソコンでは、文字を速く入力できるので、面白い作品を探すために、あれこれ検索するときは、積極的に使ってみるとよいかもしれない。
パソコンでの再生は、常にストリーミングとなる。
いろいろ使い回したあげく、自分としての再生手段の使い分けは、次のようになった。
ゆったりとアニメを見るなら、Chromecastをつないだテレビでの視聴が一番だ。無線LAN環境+Android端末+Chromecast本体+テレビという、たいへんな物量を要する構成だが、それなりの価値はあると思う。Android端末をリモコン代わりに、まったりと作品を楽しもう。
見る場所を選ばないのが、スマホやタブレット等の小型端末だ。
ふとんの中でストリーミング再生してもよいし、めぼしい作品をダウンロードしておき、外出先で再生してもよいだろう。
寝不足になったり、降りるはずの駅を通り過ぎたりとか、生活に不都合が生じるかもしれないので、自制しよう。
気になるシーンを何度も繰り返して見るような、解析的な見方をするのであれば、作品のダウンロード機能があるAndroid端末がおすすめだ。
どこへシークしても、すぐに再生を再開できるので、ストレスを感じにくい。
スマホやタブレットなら、画面を至近距離から見られるので、(画質はそれほどよくないが)細かい描写まで目に入るところも、作品の細かいところに魅力を探すような見方にはよいだろう。
画質や音質にはこだわらないなら、定額制のブロードバンド回線につながったパソコンさえあれば、すぐにでも再生ができる。Android端末や無線LANが手元になくてもよいので、手軽に始められる。
検索の文字入力を速くできるので、面白そうな作品を探すときには、パソコンを使うのもよいかもしれない。
作品をウインドウで表示しつつ、別のウインドウでSNSを開くといった使い方でも、そこそこ楽しめるかもしれない。(作品の再生とSNSは、別の画面で行ったほうが使いやすいとは思うが…。)
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製作・著作:杉原 俊雄(すぎはら としお)
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