扉を開ければ新快速!?--西日本版扉チャイム
2005年9月11日 更新
2004年3月17日 作成
あこがれの新快速の扉チャイムがあなたの扉に
以前紹介した扉チャイムに、新作ができました。
今回のは、JR西日本の新快速電車などで使われている223系の扉チャイムと似た音声が出るおもちゃです。
技術的には、以前のものと比べ、クロック周波数を上げて音程をより正確にしたり、マイコンのスリープ機能を活用して待機時の消費電力を抑えたりといった進歩があります。
詳しい話は後にして、とりあえずはこの音をお楽しみください。
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どうでしょう。これが自分の家の扉についていたら、「扉を開ければ新快速」な気分になれるかもしれません。
ちなみに、このチャイムの音は「特急しらさぎ号」などでも使われているようです。
西日本版扉チャイムの特長
営団02系のチャイムをもとにした従来品と比べ、今回の西日本バージョンは、メロディーが違います。さらに、一部回路の設計を変更しました。具体的にはこんな感じです。
メロディーが、JR西日本の223系電車の扉チャイムをイメージした新しいものになりました。
ちなみに、4分音符1つの長さは316msくらいにしてあります。
- マイコンのクロック周波数を4MHzにしました。従来機は32kHzだったので、比べてみれば実に128倍にもなります。
- 待機時の消費電流を、10マイクロアンペア以下に抑えました。チャイムを鳴らさない時は、クロックを停止した状態で待機します。
- 音程を、より正確にしました。
- 音程が変わるときに、音が途切れなくなりました。
- 音量の減衰を、従来品よりも少し速くしてみました。そのために、コンデンサの容量を変更しています。
少しだけ小さいスピーカーをつけてみました。8オーム、2ワットの品物です。みかけによらず、ずいぶんと大きな音が出ます。
- 従来あった、鳴らした時刻をEEPROMに記録する機能は、プライバシーの問題があったり、後でデータを読み出す操作をするとはとても思えなかったりするので、今回の新作にはありません。時間を計る必要がなくなったので、待機時にクロックを止められるようになりました。
使い方
PDF形式のマニュアルを用意しましたので、どうぞご覧ください。
基板上の青いボタンを押すと、チャイムが鳴ります。
いったんチャイムが鳴り始めると、鳴り終わるまでの間は操作を受け付けません。
チャイムが鳴り終わると、ボタンの状態がチェックされます。チャイムが再び鳴るのは、ボタンがこの状態から変わった時です。
- チャイムが鳴り終わった時に、ボタンが押されたいた場合は、ボタンを離した時に再び鳴ります。
- チャイムが鳴り終わった時に、ボタンがおされていなかった場合は、ボタンを押した時に再び鳴ります。
ちなみに、チャイムは、次のいずれかの信号が得られれば、扉を開け閉めするたびに鳴らすことができます。
- 扉を開け閉めするたびにスイッチがしばらくの間入る、または切れる。
- 扉を開けるとオン、閉めるとオフのように、開け閉めに対応してオン・オフが切り替わる。
回路図と部品の配置
さて、こちらが回路図となります。部品代は、1000円くらいでなんとかなりました。
基板を拡大してみると、こんな感じです。
小さな基板に、高い密度で組み込んであります。
- 8ピンのICが、心臓部にあたるマイコン「PIC12F675」です。PIC12F675は、電源電圧が2ボルト程度でも動作する扱いやすい製品です。
- 14ピンのICが、アンプのスイッチングなどに利用している論理ICです。フルブリッジ回路で、信号Aと信号Bが誤って同時に入ってしまった場合に、貫通電流をしゃ断するための役割も果たしています。
- スピーカーは、コネクタに接続しています。取り外せば、ケースにふたができます。
- チャイムを鳴らすためのスイッチは、コネクタのスピーカーとは反対側の場所に取りつけられます。回路図では「SW2」が、コネクタに取りつけるスイッチを意味しています。写真では、このスイッチはついていません。
- 水色のスイッチは、回路図では「SW1」に対応するもので、操作すればチャイムが鳴ります。
- 赤と黒のリード線は、電源につながっています。単3形アルカリ乾電池(LR6)を2本直列につないだ直流3.0Vの電源を使っています。
ちなみに、こちらが部品を配置するために書いた図です。
リード線によるジャンパを少なくできたことが、個人的には大きな進歩のつもりなのですが、いかがでしょうか。
ソフトウエアの仕組み
プログラムリストを以下に公開しますので、どうぞお楽しみください。マイクロチップテクノロジー社が公開しているMPLABのバージョン6などで使えると思います。
このソフトウエアは、次の部分からなっています。
- I/Oなどを初期化する部分。PIC12F675には、A/Dコンバータやコンパレータがついていますが、これらの機能は使わず、デジタルのI/Oだけを使うように設定します。(だったら、アナログ機能を持たないPIC12F629を使ったほうがよいという説もある)
- スイッチの状態を読み取る部分。ボタンがオンかオフかを判断する部分ですが、瞬間的なノイズを避けるために、先に256回観測された状態を現在の状態として採用するアルゴリズムになっています。
- チャイムを鳴らす部分。「ド」「ミ」「ソ」はそれぞれ1周期が、1911、1517、1276の命令サイクルに対応するので、この半分の命令数を実行するたびに、I/Oピンの状態を反転させて、パルス波を生成します。
- クロックを止めてボタンの状態が変化するまでスリープ状態で待つ部分。ボタンの状態が変化すると、割り込みによりレジュームします。
ちなみに、このプログラムをアセンブルした結果は、256ワードにも満たない小さなものです。小さなプログラムでも、考えなければいけないことは、けっこうたくさんありました。
音声波形を目で見ると
今回のチャイムの音声波形は、全体として見るとこんなふうになっています。
きれいに減衰しています。
チェックポイントは、音程のかわりめです。後半部の「ソ」と「ド」が切り替わる部分を拡大したのがこちらです。
波形が全く途切れていないでしょう。なので、とても自然な感じに聞こえます。
やってみましょう
- 電子工作をするときは、安全に十分気をつけて、ご自身の責任において行いましょう。やけどや、けがが、つきものの遊び、なのかもしれないので要注意です。
- このようなチャイムのおもちゃを作ってみてはいかがでしょうか。
- この装置は、プログラムを変えることで、メロディーを変えることができます。お気に入りのメロディーが鳴るチャイム装置を作ってみてはいかがでしょうか。
面白いものができましたら、教えていただけると幸いです。
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扉を開ければ新快速!?--西日本版扉チャイム
製作・著作:杉原俊雄(すぎはら としお)
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