学校のチャイムの音を生成する装置--作動日時を20件まで登録可能
2003年9月5日
はじめに
高校にまであって、大学にはないものの1つに、チャイムがあります。授業のはじめとおわりになるあの音は、日常生活のけじめをつけるために、欠かせないものです。
ところが、多くの大学ではチャイムが鳴りません。学部と大学院とで授業のスケジュールが異なっているなど、いろいろと事情があるからなのでしょう。
私の場合、チャイムが鳴らないと、どうも学校という気がしません。そこで、チャイムの音が出る装置をPICマイコンを使って作ってみました。
この装置から出る音は、次のような音です。
030831d1.mp3
週単位で、鳴らす日時を20件まで登録できるので、本当の学校のチャイムのつもりで鳴る日時を設定することも不可能ではありません。
ちなみに、これは第6回「PICマイコン・デザイン・コンテスト」の応募作品です。コンテストから日時がたちましたので、公開いたします。
ハードウエアの仕組み
まずは、回路図と本体のズーム写真をご覧ください。
この回路の特徴
PICマイコンPIC16F84Aが2個使われています。
- 左側のは時計として機能し、クロック周波数は32768Hzです。操作ボタンや液晶パネルとつながり、ユーザインターフェースを担当しています。
- 右側のは、チャイムの音声を生成するだけのためにあります。PIC16F84Aを20MHzで駆動しています。今からつくるのであれば、よりピン数の少ないPIC12F629などがおすすめできそうです。
単3電池を2本使ったバッテリーバックアップ回路を内蔵しています。万が一停電すると、左側のマイコンのA4ピンが停電を認識して、出力側のI/Oピンを全てLOWにすることで、省電力モードへ移行します。この状態では、左側のマイコンだけが乾電池で駆動されますが、消費電力は50マイクロアンペア程度に抑えられます。
停電の終了を検知すると、液晶パネルの初期化を行ったのち、通常の動作に戻ります。
チャイムの音声は、右側のマイコンから4つのパルス波として出力されています。この出力を、ごく簡単なローパスフィルタを通すことで、チャイムの音声に変換しています。
チャイムを鳴らすアンプの部分は、現在はチャイムが鳴っていない時も電源が入ったままになっています。鳴らない時は電源を切るように改良すれば、消費電力が削減できます。
長い間電源を入れたまま使う機器なので、ヒューズを電源の近くに入れてあります。乾電池にもヒューズをつけました。
ソフトウエアの仕組み
まずは、ソフトウエアを公開いたしましょう。
ここにあげたソースファイルは、秋月電子通商(株)で発売されている「AKI-PICプログラマーキット」に付属しているアセンブラ言語で記述されています。他のコンパイラを用いる場合は、適宜書き換える必要があります。
タイマー側のソフトウエアの特徴
- データ用EEPROMを活用し、チャイムを鳴らす予定の日時などの情報を、電源が切れても消えないように管理しています。
- 時計がだんだん遅れたり進んだりしていくくせも、EEPROMに登録できるので、進みぐせや遅れぐせを、ソフトウエアの側である程度まで修正することができます。
- アラームを鳴らすための指示は、シンセサイザ側のマイコンの電源を入れることにより行っています。別のマイコンに指示を与えるためには、電源を直接管理するのが一番確実な方法のように思えます。
- ボタンで設定できる項目が比較的多いので、プログラムもそれなりに長いものになっています。
- PIC16F628などを用いれば、プログラムメモリやデータ用EEPROMの容量が多いので、より高機能にできる可能性があります。ただし、PIC16F628は、電源電圧が2V程度では動作しないようなので、低電圧動作に対応したPIC16LF628などを用いる必要があります。
シンセサイザ側のソフトウエアの特徴
- 電源が入れられると、およそ2秒待ってからチャイムの音声を発生させます。
- 周波数の異なる4種類のパルス波を、別々のI/Oピンから同時に生成しています。
- 音量が減衰する動作は、音声のパルス幅を少しずつ縮めることにより実現しています。そのため、音量が下がっていくにつれて、高調波の発生が多くなるため、「ビヨーン」という独特の減衰をしています。波形や回路をさらに工夫すれば、もう少し違った感じのチャイムを鳴らすことができるかもしれません。
- 必ずしも全てのI/Oピンを活用しているわけではないので、8本足のマイコンを使ったほうが、製作費を下げられると思います。
使い方
青、黄、赤の押しボタンスイッチを押すことで、チャイムを鳴らす日時を決めたり、時計を合わせたりできます。
PDFファイルによる取り扱い説明書を作りましたので、どうぞお楽しみください。
さらに詳しく知りたい方は
PICマイコンのデザインコンテストで発表したプレゼンテーション資料を公開いたしますので、じっくりお楽しみください。
やってみましょう
- 一般に、電子工作は危険を伴う遊びです。けがや、やけどをしないように、また、作った品物が火事の原因にならないように、安全には十分気を付けましょう。なお、この記事には間違いがある可能性もありますが、お読みになることにより生じた不都合や事故などに対しては、筆者は責任を負いかねます。ご自身の責任において、お楽しみください。
- もしも学校に通っているのでしたら、どのような機械がチャイムを鳴らしているのか、見せてもらってみてはいかがでしょう。放送部の顧問をしている先生にお願いするとかすると、うまくいきそうです。
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製作・著作:杉原俊雄(すぎはら としお)
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