充電器の改良--充電電流がより正確に

2003年8月31日


充電電流を正確にしたい

前回の記事で紹介した充電器には、充電電流がそれほど正確に指定できないという問題点がありました。そのため、次の改良を加えることになりました。

  1. OPアンプと半固定抵抗器の追加搭載により、指示した電流値と実際の充電電流を、より近づけられる見通しです。(110円)
  2. 充電式電池にヒューズを直結させることで、電池を逆に差した場合などに起こりうる事故のリスクを下げます。(55円)
  3. 停電などにより電源電圧が低下した場合に、早めに自動的にリセットして充電を止めることで、誤動作のリスクを下げます。(0円)
  4. ケースを大型化し、ふたを閉められるようにします。(200円)
  5. 毎秒I/Oをリセットすることによる充電の瞬間的な中断を、1分間に1回程度まで低減します。(0円)
  6. 単3形を直列2本充電する以外に、充電式電池1本や単3型以外の充電式電池を接続できるようにするための電池ボックスを整備します。(回路としては、電池が1本であっても適切に充電できる設計となっています)(単3を1本用のボックスのために40円)
  7. 電源電圧を6ボルト化し、接触抵抗や充電時の内部抵抗が大きい場合でも、安定した充電電流が確保できるようにします。マイコンと液晶表示装置については、従来どおり5Vで駆動するため、電圧変換回路を追加します。(920円)
  8. ACアダプタのコネクタを基板に安定して取りつけられる物に交換し、抜き差しする時や力が加わった時の安全性を向上させます。(30円)

最後に書いてある値段は、解決のために購入した部品の価格です。合わせて1355円と、けっこうかかっていますが、趣味なので、いいということにいたしましょう。

回路の改造

回路図は、少し変わって次のようになりました。

以前、液晶モジュールの未使用ピンD0,D1,D2,D3をGNDに接続した回路図を掲載していましたが、それは誤りで、実際は開放します。GNDに接続したままですと、短絡が起こる場合があります。

ちなみに、充電式電池の近くにある0.3Aのヒューズは、抵抗値が大きいと300mAで充電しようとした時の電圧降下が大きくなり、充電電流が300mAに達しなくなることがあります。電流の定格が大きなヒューズに変えれば解決しますが、安全性は低下します。

演算増幅器LM358Nを追加することによって、PICマイコンのVREF出力の値がより正確になったと考えられます。

一方で、充電電流の指令値は、半固定抵抗で調整できるようにしたので、この部分をいかに正確にできるかが、正しい充電電流を実現する上でのポイントとなりそうです。

そして、こちらが部品の配置図です。幸い基板に余裕があったので、現在使っている基板の上におさまりました。

ソフトウエアの改造

ファームウエアのソースコードも、少しだけ新しくしてみました。I/Oの初期化を1分に1回に減らしたり、起動時にバージョン番号を表示したりしています。

ソースコードはこちらからご利用ください。

性能はどうなったかしら

2日がかりで改造して、できた物がこれです。

見た目には、前回のものとほとんど変わりませんが、6Vという標識つきのアダプタが使われていることや、ヒューズボックスがついたところなどが新しいです。

次に、きちんと調整をした上で充電電流を測定してみました。

調整は、画面表示を300mAとして充電状態にした時に、コンパレータへの入力ができる限り1.0Vに近くなるように、半固定抵抗を回すことにより行います。半固定抵抗の値は、およそ4kオームになります。

私が作った回路では、半固定抵抗は10kオームのものですが、例えば3.3kオームの抵抗と1kオームの半固定抵抗の直列つなぎにするなどすれば、さらに正確な調整ができるようになると思います。

さて、測定結果は次のようになりました。

画面で設定した電流値(mA)実際の充電電流値(mA)コンパレータへの充電指令値(mA)
0001.170.780
02021.820.5
04042.040.2
06062.160.3
08081.980.4
100102100
120122120
140142140
160161161
180181180
200200201
220219221
240239241
260258261
280277281
300296302

かなり、正確になりました。低い電流値では、表示よりも2mA程度多めに流れてしまうことがありますが、電流を多くしていった場合に誤差が大きくなる現象は、大きく改善されました。

なお、電池には単3形のニッケルカドミウム電池を、2本直列にしたものを使いました。

この図で、左から3つめの種類を使っています。

結果は、電池の種類や状態により変わってくるかもしれません。

やってみましょう

  1. 一般に電子工作は、失敗すると火事になったりして危険な面もあります。もしも、ここに書いてある品物をお作りになる場合は、安全に十分気を付けてください。このページには、間違いがあるかもしれませんが、事故やトラブルが発生しても、筆者は責任を負いかねますので、お作りになる方の自己責任となります。
  2. 乾電池をたくさん使っているようでしたら、充電式電池に置き換えてみましょう。ごみが減るので、資源の節約になるかもしれません。

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製作・著作:杉原俊雄(すぎはら としお)
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