2003年2月24日
コンピュータを使った物の識別は、コンビニやスーパーでのバーコードを使った販売管理や、駅の自動改札機でのきっぷの識別など、現実社会で幅広く行われている。
バーコードでは光センサで縞模様を読み取り、きっぷでは磁気センサで磁気情報を読み取っている。
最近、このような識別をICチップを使って行う試みが実現しつつある。
ICを用いた識別には、電磁波を用いる方法と、直接ICの端子を読み取り装置に接触させる方法とがある。
実際に導入されているシステムでは、電磁波による非接触での識別方式を採用している場合が多い。
JR東日本の「スイカ」は、ICカードを使った乗車券で、自動改札機は電磁波を使ってカードを識別する。
ある大学の学生証は、ICカードになっていて、玄関の読み取り装置は電磁波でカードを識別する。
コンピュータによる物品の識別方法を図1にまとめて示す。
図1: コンピュータによる物品の識別方法
最近では、乗車券や身分証以外にもICを使った識別を広める研究が進められている。商品に、バーコードのかわりにICをつけて、物品情報を管理しようという試みがある。 このようなICは、品物につけるタグという意味から、「ICタグ」と呼ばれる。
ICタグには、次の利点がある。
一方で、広く実用化するためには、次のような課題もある。
とりあえず、個人的な趣味でICタグを作ってみることにした。
この遊びでは、「シリアルEEPROM」という電子部品を用いて、実際にICタグを製作し、データの書き込みと識別を行う装置を製作した。
8ピンのICチップに、書き込み装置を用いてそれぞれIDを書き込むことで、読み取り装置を用いて個々のICチップを識別できるようになる。
構築したシステムの概要を、図2へまとめる。
図2: 構築したシステムの構成
バーコードのシステムに例えれば、書き込み装置はバーコード印刷装置、読み取り装置はバーコード読み取り装置を内蔵したレジ端末、ICタグ本体はバーコードそのものに対応する。
以下に、個々の機器の詳細を説明する。
ICタグの姿を図3へ示す。まさに、8ピンのICそのままの姿である。
ICタグっぽさを楽しむためには、最も端的で分かりやすい姿であると思う。
「3Wire EEPROM AT93C46」と呼ばれる商品で、1024ビットまでの情報を書き込める不揮発性メモリである。
1つ50円で、秋葉原で売られていた。実際に使われる見込みのICタグの価格は、現状では1つ50から100円程度と言われており、コストの点では全うな品物であると思われる。
データの読み書きは、8つある端子に電極を押し当てて行う必要がある。
このおもちゃでは、15ビットを識別情報として用いるので、タグは32768種類まで作ることができる。
図3: ICタグ
図4は、ICタグへ識別データを書き込むための装置で、一種のROMライタである。
左下のソケットにICタグを差し込んで使用する。
操作方法はいたって簡単である。
図4: 書き込み装置
書き込むデータには、次のルールがある。
図5: 読み取り装置
読み取り装置は基板が72 x 48(mm)と小型であり、持ち運びが容易である。
読み取り装置を身につけて生活し、ICタグを玄関や研究室入り口等に配置することで、自分自身の生活を記録する応用を検討中である。