コンクリートづめドラム缶の墓場--低レベル放射性廃棄物埋設センター


黄色いドラム缶の管理建屋

PR館を出た私たちは、日本原燃(株)が用意したバスに乗り「低レベル放射性廃棄物埋設センター」へ向かった。少し公道を走ると、すぐに会社の構内道路が見えてくる。入り口でバスが止まり、守衛さんが出てきた。「東大のみなさんです」「はい、どうぞお通り下さい」といった会話が交され、すぐにバスは構内道路に入った。会社の広大な敷地は、一面草地で、遠くの方に工場らしき建物がぽつぽつと見える。テニスコートなどもあるようだ。

どうしてこんなに広い土地がいるのだろうと思えるような広大な敷地をさらに進むと、青い筋の入った白い直方体の建物が見えてきた。「あれが、低レベル廃棄物管理建屋です」と広報の人が語る。

バスを降りて建物の中に入ると、すぐに大きなテレビモニターのある部屋に案内された。モニターには、黄色いドラム缶が映っている。ここで、私たちはこの建物についての説明を受けた。

原子力発電所から出る「放射性廃棄物」には、その放射能の強さから「高レベル廃棄物」と「低レベル廃棄物」の2種類がある。

高レベル廃棄物は、発電を終えた燃料で、うかつに近寄るとすぐに命を落とすほどの強い放射線を出す。一方、低レベル廃棄物は、発電所内で使われた軍手や掃除道具、放射線を浴びた衣類の洗濯水などで、比較的危険性は低い。そのため、高レベル廃棄物と比べれば簡単な方法で処分できる。

「低レベル廃棄物」はまず、原子力発電所で黄色いドラム缶に詰められる。ドラム缶には、セメントやアスファルトが加えられ、廃棄物はコンクリート漬けとなる。以前、動燃で起きた「アスファルト固化施設での爆発事故」は、このアスファルトを詰める過程で起こったものだ。

さて、ドラム缶はその後、六ヶ所村へ向けて運ばれる。原子力発電所の多くが専用の港を持っていることから、多くは船に乗ってむつ小川原港までやって来る。

むつ小川原港では、届いたドラム缶を初めに見たクレーンを使って陸揚げし、専用の車両で運送する。安全のため、陸揚げの時点で一度ドラム缶から出る放射線の強さを測定しているという。

この建物では、ドラム缶の点検を行っている。ドラム缶は、オートメーションでテレビカメラの前に運ばれ、作業員がテレビモニターを見ることで、ドラム缶に傷や表示の間違いがないかなどを調べる。

案内された部屋のテレビが、その映像を表示していた。画面の上からドラム缶がそろそろと降りてくる。次にドラム缶はくるくると回転し、しばらくすると横に動きだして視野から消えた。

ところでこの検査では、会社側の検査員以外に、国の検査員が働いている。会社側の検査員がOKのボタンを押しても、国側がNGを出すとドラム缶は止まってしまう。重要な所には、国などの監視を入れることになっているからだ。「ラベルの貼り方がまずい」といった理由でラインが時々止まるという。

ここで働いている人は、一日じゅうテレビモニターと格闘しているのだろうか。最近は、原子力に限らずオートメーションの工場が増えているが、働きがいはどこで見つけているのだろう。

検査に合格したドラム缶は、処分場で埋められる。処分場を見に行く前に、「検査に不合格になったドラム缶はどうなるのか」ということが気になった。聞いてみると「もしも問題があれば、ドラム缶の中を開けて再び詰め直すための設備があります」という。ところが、「今まで不合格になったドラム缶がないため、この設備はまだ一度も動かしたことがないんですよ」とまで言う。不良品がないことは好ましいことだが、この設備はいざという時きちんと動くのだろうか。「時々点検はしていますけれど、、、」という担当者の声は少々頼りなく聞こえた。

直方体の白い墓石

私たちは次に、ドラム缶が埋められている埋設場へ向かった。少し進むと、巨大な窪地が見えてきた。そこで道路はぷつんと切れる。「それでは展望室に入りましょう」と促され、崖っ縁にある展望施設に入った。

野球場がすっぽりと入ってしまいそうな窪地には、大きな白い直方体が整然と並んでいた。この中に、先ほどの黄色いドラム缶が大量に詰まっている。

ドラム缶は、この白い墓石の中で300年間かけてゆっくりと放射能を弱めていくことになる。

「コンクリートピット」と呼ばれる白い直方体の箱は、鉄筋コンクリート製で、内側には水の浸入を防ぐ「ポーラスコンクリート」がはられている。表面が白く見えるのは、防水のために表面に樹脂を塗ったせいだ。ドラム缶を入れる前の直方体には、まだ天井がない。

ドラム缶は、専用のクレーンを使って人の手に触れずにこの直方体の中に降ろされる。このクレーンには、屋根がついていて、まるで工場が1件直方体の上に建っているように見える。さらにクレーンは、地面に引かれたレールの上に車輪を持っており、直方体がドラム缶で一杯になると、次の直方体まで走ることができるというのだ。

ドラム缶で一杯になった直方体は、上からセメントなどを流しこんで密封される。さらに、表面に白い樹脂を塗ることで墓石が完成する。

ここには、日本全国から低レベル廃棄物が集まって来る。その本数は、事業許可を得たもので20万本あり、最終的には300万本まで埋める用意があるという。敷地がやたらと広かったのは、埋設用地をとっておくためだったのだろうか。

直方体は、数年後には土などで埋め戻されることになっている。ところが、完全に埋めた状態では地下水が直方体に浸入し、放射性物質が漏れ出す可能性がある。そのため、直方体の近くは単なる土ではなく、「ベントナイト」と呼ばれる粘土で埋める。

ベントナイトは、水を極めて通しにくい物質で、地下水などの浸透を防ぐ役割を果たすと考えられている。

埋められた低レベル廃棄物は、少なからず放射能(放射線を出す能力)を持っており、長い年月をかけながら放射能を徐々に失っていく。埋設したドラム缶の放射能が、十分安全なレベルになるためには、300年はかかるとみられている。

300年という年月を生きられる人間はいない。この埋設場は、子供の世代、孫の世代、ひ孫の世代、、、へと引き継がれていくということだ。未来の人類は、この埋設場を見て何を感じるのだろうか。そして、日本という国は300年後にはどうなっているのだろう。未来の世界で、ここが20世紀時代の遺跡として有名になっていたりしたらおもしろい。

埋設後も、廃棄物の安全管理は重要だ。廃棄物の出す放射線は年々弱くなるため、管理の方法も年を追って変わってくる。

埋設してから初めの約30年間は、直方体のすぐ下に掘られた点検用のトンネルを使って放射線レベルの測定などが行われる。この段階では、万が一大規模な放射能漏れがあれば、場所を特定して問題のドラム缶を掘り出すことができる。

それ以降は、主に地下水の水質検査などで間接的な測定をすることになる。この測定は300年ほど続ける必要がある。この頃になると、ドラム缶を埋めた世代はとうに退職しており、その子や孫の世代が仕事に当たることになる。

これだけ手間をかけるわけだから、ドラム缶の処理費はめっぽう高い。ドラム缶1本あたりの処理費は軽く10万円を越えるというのだ。そのためか、原子力発電所側は低レベル廃棄物の発生をできるだけ抑える努力を進めているらしい。

ふりかえると、台形の丘が見えた。「掘った土があそこに置いてあるわけでして、今後あの土を使って埋め戻すんです」という。埋設場は、地形を変えるほど大きかった。


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著作・製作:杉原俊雄(すぎはら としお)
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