太陽電池とニッケル水素電池で電気を自給自足したい--企画を立てる

2012年3月11日


太陽電池とニッケル水素電池を組み合わせて、電気を自給自足し、ラジオをつけっぱなしにするシステムを自作します。充電量を液晶モジュールに表示し、自然エネルギーを見た目にも楽しく活用します。ここでは、作品で実現したいことを企画します。


図:実験の様子

1.目標は自然エネルギーの自給自足

1.1.太陽電池でラジオを鳴らし続けたい

今回の電子工作の目的は、太陽電池と充電式電池を組み合わせて、太陽電池の電気だけで、昼夜を問わずラジオを使えるようにすることです。

電気を自然エネルギーで自給自足し、窓辺に置いておけば、常にラジオが鳴りっぱなしになるようなシステムを目指します。

大きな災害が発生すると、電力会社からの電気が使えなくなることがあります。そんなときは、正しい情報をラジオなどから集めることが大切です。

携帯式のラジオと乾電池を、いざというときに備えて準備しておいてもよいのですが、普段から電力会社に頼らずに、電力を自給自足できるラジオのシステムがあれば、いざというときも、普段と同じようにラジオを使えるので、便利そうです。

作品は、あくまでおもちゃではありますが、一度作っておけば、長い間実際に使って楽しめるものにしたいです。


図:システム構成のイメージ

1.2.自然エネルギーと充電式電池を組み合わせる

自然エネルギーの技術を使えば、電力会社に頼らなくても、太陽の光や風の力から、電気を得ることができます。

自然エネルギーの課題は、いつでもエネルギーを必要なだけ利用できるとは限らないことです。

例えば、太陽電池は夜になれば使えませんし、風力発電は風がやめば電気を作りません。

太陽電池や風力発電そのものは、電気を蓄える仕組みを持っていないので、電気を作るのと同時に使ってしまわないと、電気はすぐに消えてしまいます。

自然エネルギーに充電式電池を組み合わせると、電気が余るときは蓄え、電気が足りないときは放出できるので、課題をある程度解決できます。

例えば太陽電池とニッケル水素電池を組み合わせれば、明るい昼間に電気をニッケル水素電池に蓄えておき、暗くなってからもしばらくの間は電気を使えるようにできます。


図:明るいときは充電式電池に充電

図:暗いときは充電式電池から放電

このような仕組みは、道路標識などでよく使われています。また、宇宙で活躍する人工衛星では、太陽電池と充電式電池を組み合わせて、毎日24時間電気を使える体制を整えています。

自然エネルギーと充電式電池を組み合わせたシステムでは、電気は自然エネルギーで発電した量しか使えません。そうたくさんは発電できないので、自然エネルギーからうまれた電気は、大切に使う必要があります。

今回は、小さめの太陽電池4枚と、単3形のニッケル水素電池8本を使って、ささやかながら、小型ラジオに電気を自給自足するシステムを作ります。

1.3.やりたいことを整理する

製作を始める前に、目標を整理してみました。

2.構成要素を考える

今回の工作で必要となる物には、まずは「太陽電池」「ニッケル水素電池」「ラジオ」の3つがあります。

どのように動作させたいのか、絵に書いて整理してみましょう。


図:動作のイメージ

太陽電池、ニッケル水素電池、ラジオをそのままつないでも、ある程度までは上記の機能を果たします。

ところが、太陽電池が作る電気の量は、天気や季節により変化するので、電気のためすぎ、使いすぎを防ぐ制御が必要になります。

3.制御装置の役割とシステムの構成

ニッケル水素電池を過充電・過放電から守ったり、充放電の経過を分かりやすく表示したりするために、制御を行います。

3.1.制御の必要性

制御をしないと、こんな問題があります。

ニッケル水素電池を長持ちさせたり、充電の経過を分かりやすく表示したりする目的で、制御装置を製作することにしました。

制御装置には、次の役割を持たせます。

3.2.充電の完了は電流の累積で判定

太陽電池が電気を作っている間は、太陽電池とニッケル水素電池を接続して、充電を行います。

充電が完了したら、過充電を防ぐために、ニッケル水素電池を太陽電池から切り離す必要があります。

充電が完了したかを知る方法は、いろいろとあります。

ちなみに、ニッケル水素電池の充電方法は、Panasonic社のサイト(http://industrial.panasonic.com/www-cgi/jvcr17pz.cgi?J+BA+3+ACG4001+HHR200A+JP)に分かりやすい説明があります。とても勉強になります。

3.3.放電の完了は電圧の低下で判定

充電の完了は、電流をためた量で充電の完了を調べましたが、放電の完了はもっと簡単に調べられます。

電池を使い切るときは、電池の電圧が下がります。電圧が基準値以下になった時点で、充電完了と判断すれば、電気をほぼ確実に使い切ることができます。


図:放電の完了を判定する方法の模式図

ニッケル水素電池の電圧は、放電中の負荷回路の電圧を測ることで調べます。こちらもPICマイコン内蔵のADコンバータで計測します。

3.4.充放電はバンクを分けて行う

充電が完全に終わらない状態であっても、夜になって暗くなると、ニッケル水素電池は放電を始めます。

朝になると再び明るくなるので、ニッケル水素電池の充電を再開できます。

ところが、こまめに充電と放電を繰り返すと、ニッケル水素電池に残っている電気の量が分かりにくくなります。

充電した量と同じだけ放電できるとは限らないので、電池の残量に誤差が蓄積されていくからです。

従って、いったん充電を始めたら、なるべく充電が完了するまでは、放電をしないほうが、充電した電気の量を確実に管理できてよいです。

放電を始めた場合も、電圧が低下を始めるまでは充電を始めないほうが無難です。

ニッケル水素電池の放電が終わらないうちに明るくなり、太陽電池が発電を始めたときは、充電できるニッケル水素電池がないと、電気が無駄になります。

そこで、ニッケル水素電池をもう1グループ用意して、一方のニッケル水素電池が放電モードでも、もう一方のニッケル水素電池で充電を行えるようにします。

このようなニッケル水素電池のグループを、これからは「バンク」と呼ぶことにします。


図:ニッケル水素電池を複数バンク用意する場合の模式図

各バンクでは、充電モードで満タンになるまで充電し、次に放電モードで空になるまで放電します。放電が終わると再び充電モードとなり、充電と放電を繰り返します。

太陽電池は、ラジオを駆動するとともに、充電モードのバンクに電気を送ります。一方のバンクで充電が完了すると、他方のバンクを充電モードに切り替えて、充電を続けようとします。

ラジオは、暗い時間帯は放電モードのバンクから電気をもらって動作します。一方のバンクを使い切ると、他方のバンクを放電モードに切り替えて、放電を続けようとします。


図:各バンクの状態遷移の模式図

ちなみに、両方のバンクでニッケル水素電池の電気を使い果たすと、太陽電池が発電していなければ、PICマイコンの電源が切れてしまいます。

再び明るくなり、太陽電池が発電を始めたときに、マイコンが確実に起動するように設計することも、長期的な動作を期待するためには大切です。

3.5.表示は充放電の様子が分かるように行う

太陽電池の電気が各バンクに蓄えられる様子を、液晶モジュールに表示します。

充放電が進められる様子を視覚的に示すことで、使える電気の量を知らせたり、利用者を楽しませたりします。

次のデータを表示するようにします。

以上のことから、システムのおおまかな構成が決まりました。


図:システム構成の模式図

なお、回路図上のスイッチやメーターは、PICマイコンによる制御回路を示します。

さらに、制御の様子や計測の結果は、液晶モジュールで表示できるようにします。

4.部品の量を決める

システムのおおまかな構成が決まりましたので、次は、使う部品の量を決めます。

具体的には、ラジオや太陽電池、ニッケル水素電池、マイコン等の定格を考えます。

無理なく、余裕を持って使い続けられるものがよいです。

4.1.ラジオは小型の省エネタイプ

太陽電池で24時間使い続けられる負荷は、消費電力が小さいものが望ましいです。

電圧も、ニッケル水素電池4本を直列いつないだ4.8Vよりも低いものが望ましいです。

コンセントにつないで使うラジカセではなく、乾電池で長時間動作するポータブルラジオを使います。

Panasonic社の「R-P130」は、AMラジオ専用という単純明快な品物ながら、単3形乾電池2本で150時間スピーカーから放送が聴けるので、今回の用途には向いています。


図:AMラジオR-P130

このラジオの消費電流は、音量を控えめにすれば、おおむね20mA以内におさまるようです。

従って、2000mAのニッケル水素電池が満タンになっていれば、単純計算で100時間程度鳴ると期待できます。

ちなみに、太陽電池の電圧は8V、ニッケル水素電池の電圧は4.8V、ラジオの電源電圧は3Vと、電圧値に大きな違いがあります。

今回の工作では、電気が太陽電池→ニッケル水素電池→ラジオと伝わるにつれて、電圧を降下させています。

電圧の降下した分は、エネルギーは無駄になります。つまり、最初は8Vあったエネルギーが、使うときには3Vになってしまうので、発電できた電気の半分以下しか、ラジオに伝わらないことになります。

電圧降下で無駄になるエネルギーは、「降圧チョッパ回路」を使えば回収できますが、今回の作品では、回路を単純化するため、使っていません。

4.2.太陽電池は余裕を持たせる

用意した太陽電池の定格は、電圧が8V、電流が500mAです。

太陽電池では、20mAのラジオを常に鳴らし続けられるだけの電気を作る必要があります。電流の大きさ(mA)と、電流を流す時間をかけた値を「mAh」という単位で表記します。そうすると、一日あたりで20mA×24時間=480mAhが必要です。

ニッケル水素電池が充電電流を80%の充電効率で蓄えられると仮定すれば、太陽電池の発電量は、毎日600mAhくらいはあったほいがよいです。

一日に日が当たる時間がどれほどあるかを見積もることは難しいですが、平均して3時間程度はあると考えられています。

太陽電池の定格電流は、正面から強い日光を受けたときの性能ですが、実際には太陽は斜めからしか当たらないので、もっと小さな電流しか取り出せません。

定格500mAの太陽電池を用意すれば、平均して200mA程度発電できる時間帯が毎日3時間はあると考え、一日あたりで600mAhが得られることを期待しました。

また、4.8Vのニッケル水素電池に対して、十分高い電圧を発電して、充電電流を流れやすくする必要があります。電池ボックス等での電圧降下を考えると、太陽電池の電圧は、6V以上は必要なことが分かっています。ある程度の余裕を考えて、定格2Vのパネルを4枚直列にして、8Vとして使います。


図:太陽電池モジュール

4.3.ニッケル水素電池は4日分を2系統

ニッケル水素電池は、夜間もラジオを使い続けられるようにするために使います。

まずは、一晩ラジオを鳴らす電気が必要です。単純に24時間ラジオを鳴らすためには、480mAhの容量が必要です。制御回路でも電気を使うので、余裕を見れば約500mA程度でしょう。

雨が降るなどして、太陽電池から充電できない日のことも考える必要があります。

単3形のニッケル水素電池であれば、約2000mAhの容量があるので、充電ができなくても、4日間はラジオを駆動できます。

今回は、5日以上天気が悪い日が続いた場合は仕方がないと考え、単3形のニッケル水素電池を使います。


図:ニッケル水素電池を2バンク

4.4.マイコンの制御回路は省エネに

充電と放電を管理したり、液晶画面に状況を表示したりする回路を、制御回路と呼びます。

制御回路は、ラジオなどの負荷と同様、毎日24時間電気を消費し続けます。

消費電流は少なければ少ないほどよいわけで、目標としては1mA程度に抑えたいところです。

制御に用いるマイコンは、PICマイコン(PIC16F886)とします。このマイコンは、28ピンで、ADコンバータを内蔵しています。動作に必要な発振回路を内蔵しており、31kHzのクロック周波数で使うと、消費電流は0.1mA程度となるようです。

電流の制御では、ベース電流を消費する「バイポーラトランジスタ」をなるべく減らし、「MOS-FET」を多く用いることで、消費電流を抑えます。


図:制御回路(写真は組み立てた後の様子)

5.製作上のポイント

これまでに決めたことをもとに、これから細かい設計をしたり、組み立てたりしますが、あらかじめ気をつけておきたいポイントをまとめました。

5.1.電圧が常に変化してもよい回路にする

太陽電池の電圧は常に変化します。ニッケル水素電池の電圧も、残量に応じて変化します。

電源が複数あり、電圧が大きく変化する場合は、回路毎に電源電圧がどうなるかをよく考えて、誤動作が起こらないように配慮する必要があります。

例えば、太陽電池からニッケル水素電池に充電するつもりだったのが、ニッケル水素電池から太陽電池に電気が逆流して無駄になった、などということが起こらないようにする必要があります。

また、マイコンで行う計測では、電源電圧が下がると正確に行えなくなる項目もあるので、よく調べておく必要があります。

5.2.電気を完全に使い切っても自然に復活させたい

長い間動作していると、ときには天気の悪い日が続いて、ニッケル水素電池の電気を使い切ってしまうことも考えられます。

そうなってしまうと、マイコンの電源が切れて、システムは動作しなくなります。再び晴れた日がくれば、太陽電池により再起動させたいものです。

電源電圧が低下すると、どのようにシステムがダウンするのかや、太陽電池が発電を再開すると、どのように再起動するのかを、よく考えておく必要があります。

5.3.直射日光を浴びても壊れにくいシステム

作品の趣旨からして、太陽の光が当たる場所に置く必要がありますが、屋外の環境というのは、たいへん厳しいです。

雨や風にさらされますし、ほこりもたくさん舞っています。

また、屋内の窓際などに置くときは、故障したとき火災を起こさないように、燃えやすいものから離すなどの対策が必要になります。

風雨を防げて、煙を噴いても火が広がらないような、ケースを用意したほうがよさそうです。

5.4.過去に失敗作が2つ

ちなみに、以前にも太陽電池とニッケル水素電池を組み合わせて、同じようなものを2つ作ったことがあります。しかし、いずれもうまくはいきませんでした。

最初に作ったものは、動作はしたものの、基板が雨に濡れて壊れてしまいました。


図:1台めの制御基板。バイポーラトランジスタで制御していた


図:1台めの基板は雨に濡れて腐食してしまった(裏面)

ケースには入れていたのですが、雨水が電線を伝わり、ケースのすきまから流入したようです。

当時の回路は、バイポーラトランジスタで電流を制御しており、制御回路の消費電流が大きかったことも、特徴でした。

次に作ったものは、制御をMOS-FETで行うように改良したのですが、回路が複雑になりすぎて、配線がごちゃごちゃになり、うまく完成させることができませんでした。


図:2台めの制御基板。リード線の配線が多すぎた

どのような物を作るのであれ、可能な限り単純明快な構成にすべきです。

そうしないと、作っている本人が状況を把握できなくなってしまい、前にも後ろにも進めなくなってしまいます。

最初から複雑なものを作りたい気持ちはあるのですが、まずは、低機能でも確実に動作する回路からチャレンジすべきだと痛感しました。

今回作る回路では、これらの経験をいかします。

これらの対策により、ハード・ソフトともに、より確実に動作できるようにします。

6.作業の要素

これから製作を行う上で必要となることは、以下の通りです。

これらが全て終わったら、まとめとして、実際に使ってみます。

上記のことは、このホームページで、順次紹介していく予定です。


次の記事:太陽電池からの電流を制御する回路の製作--ダイオードに要注意


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製作・著作:杉原 俊雄(すぎはら としお)
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